先輩マジシャン

 マジックをしている方なら、先輩のマジシャンに対して、このように思ったことがあるのではないでしょうか?

『この人は、マジックを長くやっているだけで、大した事ないな…』と。

技法も、目新しいものも無く、
特別上手い訳では無い。
発想が豊な訳でもない。
表現が上手い訳でも無い。
面白い訳でも無い…。

そんな先輩マジシャンですが、甘く見てはいけません。
その人自身も意識していない、すごいものを何か持っています。



手品を始めて2年目くらいの、テクニックも上手い自身満々な若手マジシャンと、プロではないのですが、手品をやり始めて30年くらいのベテランマジシャンが居ました。
その二人が、一般のお客さんに手品見せる事になりました。
順番を決める時に、若いマジシャンは言いました。
「トリはやっぱり先輩が言ってください!」
その言葉の裏には『俺の方がスゴイけど、一応先輩だから…』といった思いが見えていました。

手品が始まりました。
若いマジシャンは、難しいテクニックを入れながら、新しいマジックを演じていました。
その時、見ていた女の子が言いました。

「あっ!今入れ替えた!」

パスを使ったのが、完全に気付かれてしまいました。
若いマジシャンは、これでもかと言わんばかりにマジックをしました。
バレたのが悔しかったのでしょう。

その後に、先輩マジシャンが登場し、手品が始まりました。

やってる手品は、昔からあるものばかりですが、みんなはとても不思議がり、楽しそうに手品を見てました。
その中でも驚いたのが、お客さんに好きなカードを言ってもらって、デックを自分(演者)の方に向けて広げて、目的のカードのところで普通にカットし、そのカードをフォースして出しました。
さっきパスを見抜いた女の子が「えー!なんでー!」と驚いてました。
私は横で見ていて、フォースに驚いたのだと思っていました。
その後の一言です。

「私の言ったカードがどこにあるか分からんのに…」

パスを見抜いた女の子が、普通に表を見てカットした事に全く気付いていないのです。

まさにベテランにしか成しえない技です。

あと、「昔、学生の時にやってた手品やけど…」と見せてもらったのが、とても面白く、目からウロコがボロボロ取れる思いを何度もしてます。

こういった事を、先輩マジシャンは意識をしていません。
先輩マジシャンは言います。

「最近の若い子は、上手い子が多い」と…。

全くとんでも無い話です。

マジックを演じているときの雰囲気。
いい具合に力の入ってない感じ。
先輩には及びません。

こういった事例は、遭遇する機会は少ないですが、私が思うに、先輩マジシャンは必ず何かを持ってます。

そういった先輩方に、私のDVDを見ていただき、「面白かった!」と言ってもらえると、本当に頭が下がります。

その度に、私は思います。

『先輩には及びません』

“手品は一日にして成らず”ですね。





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