不必要なセリフ

 手品を演じていると、セリフという物がすごく大事な事に気づかされます。
そのセリフに関する話ですが、今回は“不必要なセリフ”について書きたいと思います。

 「ここにハートの5があります。このカードをこのままココに置いておきます」と言ったとします。

上記のセリフで私が気になるところはどこか分かりましたか?

まぁ、おそらくハートの5をテーブルに置いた事を印象付けたかったのだと思いますが、ここまで言われると、逆に怪しいですよね。(^^;)

私自身セリフを考える時に気にするのが、ぼぉ〜っと見てる人と疑って見てる人の事を考えてセリフをイメージします。
何故かと言いますと、この両方を抑えてセリフを考えると、普通に見ている人には、ちゃんと伝わるからです。

上記の例で考えると、「ハートの5があります」という部分は、声に出す事によって、ぼぉ〜っと見ている人に印象を植え付ける事が出来ます。
おそらくですが、ぼぉ〜っと見ている人にハートの5を見せて黙って置いたら、後で置いたカードが何だったか覚えていない可能性が出てきます。
なので、このセリフは必要だと思います。

気になる点は「このカードをこのままココに置いておきます」のところです。
「ココに置いておきます」は置いた場所を覚えておいて欲しいから言ったセリフで必要だと思います。この辺りは演じる手品によりますが、同じようにテーブルにカードを数カ所に置く場合は重要だと思います。
ただ、数カ所に置く場合はなので、1箇所にしか置かない場合は、不必要なセリフになります。

私の気になった点は「このまま」の部分です。

これは、動作でそのまま置いた様に見えているはずです。
なのにあえて「このまま」と言われると、逆に怪しく感じませんか?

例えばスーパーで売ってるソーセージの試食で、「一つどうですか?」とか「良かったら食べてみて下さい」なら分かりますが、「安全ですよ」とか「つまようじは新しいのを使ってます」なんて言われたら、逆に警戒しませんか?

当たり前の事をあえて言われると、逆に警戒してしまいます。

 ここに書いたのは極々私的な意見ですので、参考程度に流し見して頂いて結構なのですが、セリフを考えるのは本当に難しいです。

実際に演じてみると、『これを言った方が、不思議さが増す』と思っていた部分を省いた方がウケが良かったりするので、本当に難しいですね。






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